めまい、耳鳴り、顔面神経麻痺
耳の神経(内耳神経/第8神経)には、「蝸牛神経(聴覚、聴く)」だけではなく「前庭神経(平衡感覚、バランスを保つ)」もあります。耳に障害が起きると「難聴(聞こえにくい)」「耳鳴り」以外にも、「めまい」が起こることもあります。
また、顔を動かす神経(顔面神経/第7神経)は、耳の神経(第8神経)と隣の神経です。同じく内耳道から耳の中~耳下腺内を通り、顔面に分布します。ですので、耳や耳下腺など耳鼻科領域の病気でも、「顔面神経麻痺(口から水がもれる、目がつぶれない)」がおこることがあります。
突然起こった症状の場合には、早めに耳鼻咽喉科や脳神経外科の専門医を受診してください。
どうして脳神経外科もお勧めするのでしょう?
めまいや顔面麻痺などの場合には、「脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などなど)」のような緊急性の疾患が隠れている可能性があるからです。
脳卒中に関する用語で「FAST」があります。
「顔面麻痺(顔:Face)」、「片側の手足のまひ(腕:Arm)」、「ろれつがまわらない(言葉:Speech)」などの症状がある場合には、「早い時期(時間;Time)」の診断と治療が必要です。
脳神経外科でMRIなどの頭(中枢性疾患)の検査で問題がなかった場合には、耳鼻咽喉科(末梢性疾患)での治療が望ましい場合が多くなります。
耳から起こるめまい
代表的なものとして以下のものがあります。
中耳炎(真珠腫性中耳炎、急性中耳炎/内耳炎など)
中耳の炎症が内耳まで及ぶことがあります。耳の痛みとともに、めまいや耳鳴り、顔面麻痺が生じた場合には、緊急処置が必要な場合が多いです。速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
突発性難聴、急性感音難聴
突然聞こえが悪くなる疾患です。外傷性(ぶつけた)、圧外傷性(強く鼻をかんだ)、音響外傷性(ライブやイアホンなどで大音量を聞いた)など原因が明らかなもののほか、原因が不明のものを「突発性難聴」とよびます。
難聴だけではなく、めまいも伴っている場合には、重症の可能性があるので、速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
ハント症候群(Hunt症候群)
末梢性顔面神経麻痺には、予後が良い(なおりやすい)ベル麻痺(Bell麻痺)と、予後が悪い(なおりにくい)Hunt症候群があります。
どちらも早期の治療が望ましいですが、耳介周囲の皮疹や痛み、めまいを伴う場合には、Hunt症候群が疑われ、当院では遅くても発症後72時間以内の治療をお勧めします。
メニエール病、低音障害型感音難聴(ストレス性難聴)
数時間単位のめまいを繰り返すことのある疾患です。典型的な場合には、難聴や耳鳴り、耳閉感(こもった感じなど)もおこります。急性期には安静が第一です。
水分補給、投薬治療、必要に応じて点滴治療も行います。当院では、慢性期における生活指導や鼓膜マッサージも行います。いずれの治療も無効な難治例かつ重症例では、鼓膜チューブ留置後の鼓室内薬物治療を相談することもあります。
良性発作性頭位めまい症
めまいは数分以内におさまることが多いですが、頭を動かすたびに(寝返りをうつ、布団から起き上がる、おじぎをするなど)、繰り返しおこることがあります。投薬治療のほか生活指導を行います。
前庭神経炎
難聴や耳鳴りなど(蝸牛神経由来の症状)はほぼ起こしませんが、回転性のめまいが数日間~1週間持続します。
水分もとれないようであれば入院治療をおすすめし、連携先の病院を迅速に手配させていただきます。